守りたい人【完】(番外編完)
「何この旨そうなトマト」


ゴソゴソと野菜を漁っていると、不意にそんな声が聞こえて顔を上げる。

すると、タオルで額から流れる汗を拭きながらそこに現れたのは――。


「朝比奈さん!」


思わず声を上げた私を見て、隣にいた鍛冶君がニヤニヤと笑った。


「な~んや、志穂ちゃん、あからさまに嬉しそうな声出して」

「そ、そんな事ありませんよ!」

「俺の時は、『あ、美味しそうな野菜~』って、俺よりも野菜に気取られてたんになぁ」


不貞腐れたように唇を尖らせる鍛冶君を見て、慌てて弁解する。

それでも、鍛冶君はすぐにブハッと吹き出してケラケラと笑い出した。


「志穂ちゃん、最近いじり甲斐あるわぁ~」

「ちょっと、本当にやめてよね!」

「あ~あ、こんなにラブラブになるなら、お膳立てしてくっつけるんやなかったな。俺はただのピエロやんか」

「ピエロってなんだ」

「ピエロも知らへんのか、朝比奈さんは! これやから筋肉だけの人はアカンわぁ~」

「ピエロは知ってる。ただ、なんで鍛冶がピエロなんだ」

「あ~も~説明すんのめんどいわぁ」


真面目な顔で問いかける朝比奈さんを鼻で笑ってあしらう鍛冶君。

まるで漫才みたいな会話に、思わずクスクス笑ってしまった。

そんな私の姿を見て、言い合っていた2人もハタと我に返って笑みを浮かべた。
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