守りたい人【完】(番外編完)
気が付いたら、知らない土地にいた。
ここがどこだか分からない。
名前も知らない土地。
見渡す限り見える田園風景。
視線を更に遠くに向ければ、連なる山々が俺を包んでいた。
山は好きだ。
木々に囲まれていると、心が落ち着く。
だけど、山と言われて真っ先に思い浮かぶのは仕事の事だった。
演習で行くのは大概山深い場所で、そこに天幕を張って訓練をしていた。
顔にドーランを塗って、重たい背嚢を担いで、泥だらけで何十キロも歩き続ける。
かと思えば、ヘリからパラシュートで降りたり、災害派遣に向かったり。
俺達は毎日身を粉にして訓練に励んでいた。
正直、辛くてめげそうになった時もあった。
それでも、狭い天幕の中で仲間達と一緒に酒を飲んで笑い合った日々を思えば、辞めようとは思わなかった。