守りたい人【完】(番外編完)
それから、どれだけ経ったか分からない。
ただ、ボーっと変わらない景色を眺めていた。
だけど、真っ青だった空が茜色に染まりだした頃。
音の無かった世界に、不意に電車が来る事を知らせる音が響いた。
カンカンカンと、いやに耳につく音に眉間に皺を寄せた。
世界が動き出す度に、煩わしさを感じる。
俺の世界は止まったままなのに、過ぎていく時間が俺を更に空しくさせるから。
逃げるように視線を下げた時、電車から降りてくる足音が聞こえた。
こんな何もない場所に来る人がいるのか。
そんな事を思っていると。
「あら、お客さん?」
不意に聞こえた、明るい声。
導かれるように視線を上げると、こちらを覗き込むようにして立っている1人の女性がいた。
年は50歳くらいだろうか。
フワフワの髪に、クリっとした目が特徴の人だった。
何も言わずにいる俺を見て、ニコニコと微笑んでいる。