守りたい人【完】(番外編完)
「どちらから来たの?」
「いや……」
「ねぇ、ほら、あなた! 来て来てっ」
久しぶりに声を出したからか、僅かに擦れていた。
そんな俺の声が聞こえなかったのか、女性は嬉しそうに頬を染めながら、近くにいた男性を呼び寄せた。
近寄ってきたのは、いかにも人の良さそうな男性。
目を細めて、こちらに歩み寄ってきた。
「おぉ! お客さんか!」
「もしかして、町興しのポスターを見て来てくれたのかしらね!」
女性は嬉しそうに小声でそう言っているつもりだけど、駄々洩れだ。
男性の耳元で喋りながら、俺の方をチラチラと見ている。
その様子を何も言わずに見つめていると、瞳を輝かせた2人が揃って俺の方に向き直った。
まるで、今から漫才でも始めるような雰囲気にただ瞬きを繰り返す。
すると。
「ようこそ~ぉ」
そう言って、両手を伸ばして掌を俺に向かってヒラヒラしだした2人。
ゆるい感じが、一昔前のテレビを見ている気分だった。