守りたい人【完】(番外編完)
「早く食べないと冷めるぞ」
「おにぎりの中身は、梅干よ」
そう言って、早く食べろと急かしてくる2人。
本当に食べていいのか一瞬躊躇したけど、2人のワクワクした眼差しを受けて、まずはおにぎりを恐る恐る口にした。
口に入れた瞬間、ふんわりと香る海苔の香り。
優しく握られたおにぎりが、口の中でほどけていった。
どこか懐かしく、優しい味。
ずっと昔に食べた覚えがある。
いつだったか。
あぁ、きっと小学校の運動会の時だ。
母さんが俺達3人兄弟の為に、朝早く起きて沢山のおにぎりを握ってくれた。
確か、あの時家族はみんな笑っていた。
弟2人も、母さんも、父さんも――。
だけど、最後に見た両親と兄弟の顔が不意に脳裏に蘇る。
まるで軽蔑したように、冷たい目。
『一家の恥さらし』だと言われた言葉。
思わず口に運んでいた手が止まる。
現実に一気に引き戻された気分になって、体が重くなった。
すると。