守りたい人【完】(番外編完)
あまりにも突然の展開に頭がついていかない。
だって、まだ出会って数分の関係で互いの名前すら知らない。
どこの誰かも分からない俺に、家に来いなんて普通じゃありえない。
なのに、この2人は名案だと言わんばかりに盛り上がっている。
興奮のあまりか、いつの間にか立ち上がっていた2人をポカンと見つめる。
もはや、どこまでが本気か分からなかった。
「それとも、行く所あるのか?」
すると、何も言わない俺に業を煮やしてか、男性が俺の顔を覗き込んでくる。
その言葉に、力なく首を横に振った。
実家にはもう帰れない。
隊舎にも帰れない。
家族も職場も仲間も、全部失った。
俺は、空っぽだった。