守りたい人【完】(番外編完)
どうやら凹凸のない体がアイツのコンプレックスだったのか、逆鱗に触れた俺の一言。

あまりの剣幕に、返す言葉が見つからない。


「……悪ぃ」


ポツリと降伏の言葉を落とした俺を見て、思いっきり睨みをきかせた後、アイツは物凄い勢いで扉を閉めた。

俺の鼻スレスレの所で、バタンと扉が閉まる。


長い廊下の端に1人佇む俺。

嵐が去った後のような気分だった。


「女って、怖ぇ」


今まで自衛隊の訓練の中で散々罵声を浴びてきた。

だから、ちょっとの事じゃ動じない自信はあった。

あったけど。


「あいつ自衛官向きだな」


ポツリと呟いて、床に転がっていた風呂セットを持ち上げる。

だけど、どことなく胸の奥が僅かに温かかった。


初めてだった。

あいつの包み隠さない本当の感情を見たのは。

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