守りたい人【完】(番外編完)
無意識にあがる頬のまま、近くにあった食堂の椅子に腰かける。

思い出すのは、目を吊り上げて怒るアイツの顔。

見たかった笑顔ではなかったけれど、真正面からぶつかってこられたのは初めてだった。


素の姿を見れた事に、少なからず嬉しく思う。

そんな感情を顔に出さないように、椅子に腰かけたまま風呂が開くのを待った。

すると。


バンッ。


まだ怒っているのか、勢いよく開いた風呂場の扉。

そして、ドスドスと足音を響かせたアイツが出てきてすぐに、俺の存在に気づいて顔をこちらに向けた。

だけど、その顔は怒りと恥ずかしさに満ちていて、何も言わずに俺を睨みつけた後、そのままピューっと逃げるように自室へ帰っていった。


その姿を見て、クスクス笑う。

なんだか、面白い玩具を見つけた気分だった。


「あいつ、怒ったら茹でダコみたいになるんだな」


1人そんな事を呟きながら、ゆっくりと立ち上がって風呂場に向かう。

さっきまで散乱していたモノは綺麗に片付いていた。


クスクスと笑いながら、湯気の立ち込める脱衣所で服を脱ぐ。

鏡に映った自分の顔は、酷く嬉しそうだった。
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