守りたい人【完】(番外編完)
あの日は、春を目の前にして、まだ冬の寒さが残るようなそんな日やった。

出張先で思ったより早く仕事が終わったさけ、なんや美味い蕎麦でも食べて帰ろうかな思て、ネットで調べた古民家でやってるっちゅう蕎麦屋に立ち寄った。

田んぼの真ん中にポツンとあるその店は、口コミの通り美味かったけど、アクセスが悪いせいか、平日の微妙な時間のせいか客は俺しかおらんかった。

観光でもして帰ろうか思たけど、観光地があるようには思えへんかったし、もう帰ろうかな思てた時、不意に小さな駅が見えた。

導かれるように駅まで足を向けて、その小さな駅を見上げた。


無人の駅で、屋根もない小さなホーム。

線路沿いには雑草が生えまくってて、今にも廃線しそうな場所やった。


やのに、妙に懐かしい気分になってその駅を写真に撮る。

小さな木のベンチがあるだけで、時刻表もパっと見、白紙や。

絵に描いた様な田舎具合に、こんな場所が未だに残ってたんやなと妙に感動した。


僅かに好奇心が湧き上がって、散策する事にした。

まだ春一歩手前やから、目の前に見える田園風景や山々は寒々しい感じやった。

そやけど、きっと緑や色とりどりの花が咲けば、綺麗な場所になると思えた。
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