守りたい人【完】(番外編完)

ワイワイと楽しそうに話す鍛冶君と朝比奈さん。

その輪を抜け出して、志穂ちゃんが私の手を取って、縁側まで一緒に向かった。


「もう、お腹ペコペコだったの。あ~この味懐かしい~。大好きなんだよね、たまちゃん家のパン」

「志穂ちゃん、昔っからメロンパン好きだよね」

「東京にいた時、いろんなパン屋さん行ったけど、この味を超えるメロンパンは無かったなぁ~」

「ふふ、大袈裟だよ」

「本当だって! でもさ、思うんだよね」

「ん?」


モグモグと美味しそうにメロンパンを口に運ぶ志穂ちゃんが、そこで言葉を切って私の顔を覗き込んできた。

その表情は昔と少しも変わっていなくって、思わず口元に笑みが浮かぶ。

すると。


「隣にたまちゃんがいるから、美味しいんだよ」

「え?」

「一番大好きな友達と一緒に食べるから、美味しいんだよ」

「――」

「もちろん、パンの味も三ツ星だけどね」


そう言って、少しだけ照れた顔で笑った志穂ちゃん。

そして、逃げるように中庭に目を向けた。
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