守りたい人【完】(番外編完)










「ここにいたのか」



不意に名前を呼ばれて、顔を声のした方に向ける。

すると、縁側に座る私を見下ろす黒目がちな瞳がそこにあった。

その姿に向かってニッコリと微笑むと、返すように僅かに微笑んだ朝比奈さんが隣に腰かけた。



「鍛冶が探してたぞ」

「ふふ、鍛冶君なんだって?」

「近所から団子を貰ったって騒いでた」

「お団子!? じゃぁ、みんなでお花見しなきゃですね」



そう言って、縁側から落ちる足をブラブラと揺すりながら、視線を朝比奈さんから目の前の山々に向ける。

もうすっかり春本番で、山々は薄らと桃色に染まってきた。


そして、目を移せば満開に咲き誇る桜の木。

優しい風に吹かれて、花びらが青空を舞っている。


麗らかなその景色を見るだけで、無意識に頬が上がる。

幸せだな、とそう感じる。

< 448 / 456 >

この作品をシェア

pagetop