守りたい人【完】(番外編完)
「ここにいたのか」
不意に名前を呼ばれて、顔を声のした方に向ける。
すると、縁側に座る私を見下ろす黒目がちな瞳がそこにあった。
その姿に向かってニッコリと微笑むと、返すように僅かに微笑んだ朝比奈さんが隣に腰かけた。
「鍛冶が探してたぞ」
「ふふ、鍛冶君なんだって?」
「近所から団子を貰ったって騒いでた」
「お団子!? じゃぁ、みんなでお花見しなきゃですね」
そう言って、縁側から落ちる足をブラブラと揺すりながら、視線を朝比奈さんから目の前の山々に向ける。
もうすっかり春本番で、山々は薄らと桃色に染まってきた。
そして、目を移せば満開に咲き誇る桜の木。
優しい風に吹かれて、花びらが青空を舞っている。
麗らかなその景色を見るだけで、無意識に頬が上がる。
幸せだな、とそう感じる。