守りたい人【完】(番外編完)


「あの日から、もう一年ですね」


そんな気持ちを胸に、ポツリとそう呟いた。

そして、視線を隣に向けると、合わせるように朝比奈さんの瞳がこちらに向けられる。


すると、僅かにキョトンとした顔をしたので、意味深に微笑み返す。

そんな言葉足らずだった私を見て、朝比奈さんは更に首を傾た。

その姿を横目に、クスクスと笑いながら再び桜の木に視線を向けて目を細めた。


「朝比奈さんが私に夜桜を見せてくれた時ですよ」


そう言うと、朝比奈さんは「あぁ」といった風に頷いてみせた。

どことなく照れた姿で、視線を逃がすように桜に向けた。


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