守りたい人【完】(番外編完)

「私、あの時見た桜が人生で1番綺麗だったかな」

「大袈裟だな」

「ふふっ。でも本当ですよ?」

「そうか」

「あんなに胸を打たれたのも、初めてです」



今でも、目を閉じれば思い出す。

明かり一つない場所に咲き誇る、満開の桜。

まるで、自ら光を発しているのではないかと思う程、暗闇の中でその桜は輝いて見えた。


だけど、こんなにもあの桜が印象に残っているには理由がある。

それは、朝比奈さんが側にいてくれたから。

不器用ながらも、落ち込んでいた私を励ましてくれたから。


かけがえのない思い出が、あの日の夜に閉じ込められている。

今思えば、あの日から私達は始まったのかもしれない。

あの桜の木の下から。



「今年も、見に行きましょうね」



もう一度、一緒に見たかった。

あの時よりも、ずっと近くに感じる朝比奈さんと一緒に。


< 450 / 456 >

この作品をシェア

pagetop