守りたい人【完】(番外編完)
「私、あの時見た桜が人生で1番綺麗だったかな」
「大袈裟だな」
「ふふっ。でも本当ですよ?」
「そうか」
「あんなに胸を打たれたのも、初めてです」
今でも、目を閉じれば思い出す。
明かり一つない場所に咲き誇る、満開の桜。
まるで、自ら光を発しているのではないかと思う程、暗闇の中でその桜は輝いて見えた。
だけど、こんなにもあの桜が印象に残っているには理由がある。
それは、朝比奈さんが側にいてくれたから。
不器用ながらも、落ち込んでいた私を励ましてくれたから。
かけがえのない思い出が、あの日の夜に閉じ込められている。
今思えば、あの日から私達は始まったのかもしれない。
あの桜の木の下から。
「今年も、見に行きましょうね」
もう一度、一緒に見たかった。
あの時よりも、ずっと近くに感じる朝比奈さんと一緒に。