守りたい人【完】(番外編完)
それから、懐かしむように辺りをブラブラしてみたけど、山と田んぼしかない事を思い出して、再び駅の待合室に腰を下ろす。
誰か話し相手でもいればいいのだけれど、そんな相手見つかるはずもない。
確か、駅から家まで車で30分ほど。
チラリと時計を見たけど、電話をしてまだ10分ほどしか経っていなかった。
はぁっと小さく溜息を吐いて、携帯に繋いだイヤホンを耳に捻じこもうとした、その時――。
「姫野志穂さん?」
静寂の中に突然聞こえた声にビクリと肩が上がる。
おまけに自分の名前を呼ばれたから、更に驚いた。
勢いよく声のした方に視線を向けると、駅の小さな入口に一人の男の人が立っていた。
「え……?」
突然の事で対応できなかった私は、瞬きも忘れてその男性を見つめる。
さっぱりと切られた黒髪短髪に、鷹みたいに鋭い目と、すっと通った高い鼻。
どこにでもありそうな無地のパーカーとジーンズ姿だけど、身長が高くて体つきがしっかりしているからか、どこか絵になる。
年は20代後半だろうか。
精悍な顔だけど、無表情だからか少し怖い。