守りたい人【完】(番外編完)
「あはははっ、彼氏なんているわけないじゃない! ってか、ここに住んでいる以上、そんな人に出会えるわけないよ!」

「そ、そうなの?」

「忘れたの~? ここら辺にいる同年代って私と志穂ちゃんだけだよ? あとはみ~んなご老人! 若い人がいたとしても、結婚して帰ってきた人くらいだよ」


告げられた現実に、確かに。と思い出す。

幼馴染にいた数少ない男友達も、仕事を求めてみんな都会に出て行った。

仮にいたといても、こんな小さな田舎町だからみんなの素性は知ってるし、遠からず親戚だって話も珍しくない。

出会いがあるとすれば職場だろうけど、実家のパン屋さんを手伝っているたまちゃんは新しい出会いすら無縁だ。


「そ、そうだよね」

「毎日、パンと顔見知りのおばあちゃんしか見ない生活の中で、出会いなんてあるわけないじゃない!」


物凄くカオスな状況なのに、ケラケラと可笑しそうに笑うたまちゃんの底なしの明るさと楽天家な性格には驚きだ。

同じ26歳という女真っ盛りの年代なのに、将来の事が心配じゃないのだろうか。


「志穂ちゃんは、いるの? 彼氏?」


驚きと尊敬と心配の感情を胸に宿した私に、たまちゃんが笑いすぎてか涙を浮かべた目で私を見つめてきた。

その姿に、言っていいものか迷う。
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