守りたい人【完】(番外編完)
朝比奈さんの言う通り、私は上手くいかない事を全部周りのせいにしていたように思う。

そうやって、逃げていたように思う。

本当はどこにいても、私は私なのに。

変われるのも、変われないのも、私自身のせいなのに。


そんな単純な事に気づかず、私はずっと足踏みしていた。

朝比奈さんに言われて、ようやく気付いた。

何も変わらないのは、自分自身のせいだって――。


大きく息を吸いながら、頬に風を受ける。

閉じていた目を開けば、風に乗って桜の花びらが暗闇の中で舞っていた。

その景色が息を飲むほど美しかった。


「知りませんでした。桜がこんなに綺麗だなんて」

「――」

「……違うか。見ようとしてなかったんですね」


逃げて逃げて、現実を見ようともしなかった。

自分で自分の時計を止めてしまっていた。

動かそうともしなかった。


そんな自分が滑稽に思えて、大きく息を吐いて空を見上げる。

すると、そこには見た事もないほどの星が散りばめられていた。


「綺麗……」


あまりの綺麗さに、無意識に言葉が零れる。

どこまでも広がる美しい星空が、世界は広いのだと教えてくれる。

それと同時に、自分の見ていた世界がどれほど小さいのかを教えてくれる。


ゆっくりと視線を下ろせば、同じように空を見上げていた朝比奈さんがいた。

その姿に向かって、微笑む。
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