守りたい人【完】(番外編完)
「わざわざ、これを私に見せに連れて来てくれたんですか?」

「――」

「慰めてくれたんですよね?」


ふふっと笑ってそう言えば、ムスッとした顔の朝比奈さんが視線を下ろして私を見つめた。

だけど、反論してこないって事は、そういう事なんだと思う。


その姿を見て、思う。

きっと、この人はただ不器用なだけなのかもしれない。

自分の感情表現が苦手なだけで、本当はとっても優しくて、真っ直ぐな人。

だってそうでなきゃ、あんなに私の事理解して言葉を投げかけてくれない。

こんな素敵な景色、誰かに見せようと思わない。


そうと分かった瞬間、今まで不愛想な彼にイライラしていた気持ちがスッと溶けてなくなる。

それと同時に、嬉しさが湧き上がった。


「素直じゃないんですね」

「――」

「あ、ほら、そういう所が素直じゃないんですよ」


再び無視を決め込んだ朝比奈さんを横目にクスクスと笑う。

そして、再びゆっくりと照らされた満開の桜に目を移した。

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