クールな御曹司の契約妻になりました

「会長から『お前がいると社内がざわつく。ほとぼりが冷めるまで出勤するな』と珍しく叱咤された」


千裕さんは随分と傷ついた様子でそう言うと、力なく笑って見せる。

知り合って１カ月半、千裕さんのこんな姿を私は初めて目の辺りにして、どうにかしてあげたいという気持ちが沸々と湧いていた。


「千裕さん!!１つだけ私のワガママ聞いてもらってもいいですか？」

「あぁ、今回は香穂にも随分、迷惑かけているからな。俺が出来る範囲であれば……」


私の突然の申し出に、きょとんとした表情を一瞬見せた千裕さんだったけれど、さっきまでの深刻そうな表情を少しだけ崩して柔らかに微笑む。


「私、千裕さんと２人で新婚旅行に行きたいです。ワイドショーで話題にされることもない、カメラマンも追いかけてはこない、どこか遠いところに行きたいです」


私の提案に、千裕さんより先に笑って見せたのは、千裕さんの真後ろに佇む女性の霊だった。