クールな御曹司の契約妻になりました
「ほら、香穂。俺の手に掴まって」
指先で目尻の涙をすくいながら、笑いを堪えている千裕さんが、私に手を差し延べてくれる。
「ありがとうございます」
千裕さんの手に掴まる。
そして、渾身の力を込めて私は千裕さんの手を引っ張った。
「か、香穂っ!!ちょっと……」
ドボーン!!
私よりも随分大きな音が、千裕さんの驚きの声をかき消す。
「何するんだ!?」
「私のことを笑った仕返しです」
ずぶ濡れの千裕さんが抗議の視線を送ってきたから、私は頬を膨らまし、プイっと視線を反らしてみる。
だけど、髪の毛までずぶ濡れの千裕さんの姿が気になってチラリと視線を千裕さんに向けるとふと視線が交わる。
そしたら、もう限界だった。
今度は私が噴き出す番のようで、千裕さんの前で私は声をたてて笑って見せる。
それを見た千裕さんまで噴き出して、プールの中で2人でずぶ濡れのまま笑いあった。
千裕さんが屈託のない笑顔で心から笑ってくれている。
それだけで私の心に熱いものが流れ込んできて、嬉しくて仕方なかった。