クールな御曹司の契約妻になりました
一瞬、私の頭の中に言葉が降り注いできた。
「さ・や・か。」
その言葉は私の意志を伴わないような形で呟かれた瞬間。
「香穂っ!!」
気が付いたら私の手首を強く握って、プールサイドから立ち上がらせコテージの中へ引き摺るようにして引っ張って歩く。
「香穂、お前、何か俺のことについて調べたのか?」
コテージのリビングで明らかに動揺しながらも冷たい視線で私を睨みつけ、小声で詰問する。
私の言葉は、確実に千裕さんの琴線に触れてしまったみたいだ。
私は小さくなりながら、大きく首を左右に振って否定して見せる。
「そっか。そうだよな。サヤカのことを知っているのは、成松だけだ。あいつが言うわけない」
少しだけ安堵の表情を見せた千裕さんは、リビングのソファーに足を組んで座り、私に隣に座るように促した。