クールな御曹司の契約妻になりました
「事故だったんだ」
握りしめた手に力が込められて、千裕さんが重たい口を開く。
「大学の頃、俺もサヤカも、お互い本気だった。もちろん、俺は二階堂グループを継ぐ立場にあったから、一人前になったら結婚しようと考えていた」
「本気、だったんですね」
私の言葉に、千裕さんは小さく、だけど力強く頷いた。
「あれが、きっと最初で最後の俺の本気の恋愛かもな」
千裕さんは嘲笑しながら、悲し気に笑って見せる。
『千裕は本気の恋愛なんかしない』
ふと、頭に浮かんできたのはパーティーで萌さんに言われた一言。
本気の恋愛をしないんじゃない。
サヤカさんのことを今も本気で……。