クールな御曹司の契約妻になりました
「以前、尋ねたことをもう一度聞いてもいいですか?」

「あぁ」

私の頬を伝う涙を暖かな指ですくいながら、千裕さんが頷く。

「どうして、契約結婚なんてしようと思ったんですか?」

サヤカさんの居なくなった4月1日という大切な日に……。

千裕さんは困ったように頭を掻くと、視線を泳がしながら言葉を選んでいる。

きっと私を傷つけないようにだということだけは分かって、「何を言われても大丈夫」と伝えるとさらに困ったように眉を潜めてしまった。


「10年……。俺なりに前を向かないといけないと思って、いろんな女とそれなりに恋愛した。それは香穂も知っての通りだ」


週刊誌の記事を飾り、世間を騒がせる千裕さんを思い浮かべてしまう。

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