クールな御曹司の契約妻になりました
ふいに隣に座っている千裕さんと視線がぶつかる。
千裕さんはフッと息を漏らすように微笑んで、私の髪を弄ぶようにして撫でる。
モヤついたままの私の心がわずかに飛び跳ねて、なんだかくすぐったい。
「結婚式の日からずっと思っていたんが、香穂はサヤカにどこか似てるんだ」
「えっ?」
「そう、そういう所」
思わず聞き返した私に、千裕さんがからかうように笑うから、なんだか2人を包む空気は和らいで、私は頬を膨らまして見せた。
「サヤカもそうだった。俺が二階堂グループの跡継ぎだとか関係なく、一人の人間として接して、言いたいことははっきりと口にしていた。いつも真っすぐで、一生懸命で。それに、相手の気持ちを察する能力は抜群に秀でていた」
私の瞳を見つめながら話をしている千裕さんの目は、懐かしそうな視線で、私のことを褒められているのに心が痛みすら覚えた。