クールな御曹司の契約妻になりました
契約違反の気持ちの始まり
「じゃ、行ってくる」
「はい。行ってらっしゃい」
「なんだか、本当に新婚の夫婦みたいだな」
出勤前、スーツ姿の社長オーラが漂う千裕さんが玄関前で照れたように微笑む。
屈託のない笑みに私は何だか恥ずかしくって、視線を泳がせる。
帰国して、ようやく会長であるお父様の許しがあって、千裕さんは今日から出勤することを許された。
『社長が居なくて、現場は大混乱です』
成松さんの心からの嘆きが電話越しに聞こえてきたのは、数日前。
どうやら成松さんを中心に会長に掛け合ってくれたらしく、予定よりもかなり早いお許しになったみたいだ。
「千裕さん、頑張ってくださいね」
「もちろんだ」
言われなくても、そんなこと分かっている。
自信満々の返事。
瞳はやる気に満ち溢れていて、余裕の笑みを浮かべる千裕さんは、いつ見ても惚れ惚れするほどカッコいい。