クールな御曹司の契約妻になりました

「香穂、今夜は出来るだけ早く帰ってくるから。夕飯作っておいてくれないか?」

「えっ?」

千裕さんが、靴を履きながら私に背中を向けたまま、そんなこと言うから、私は思わず聞き返す。

「これからは、出来るだけ2人の時間も大切にしようと思うんだ」

千裕さんはもう一度、整った顔を崩して笑う。

そういえば、帰国してからというもの千裕さんは私によく笑顔を見せてくれる。

元気になった。

簡単に言ってしまえばそれだけなんだけど、なんというか、そう。優しくなった。



「2人で時間を共有すれば、より夫婦らしくなるだろう?」

千裕さんはニンマリと笑う。

「わかりました。じゃあ、夕食作って待ってますね」

夕食を作っておいて欲しいなんて頼まれたことだって初めてで、動揺しながらもぎこちない笑顔を浮かべた私に「いってきます」と声をかけ千裕さんは出社して行った。

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