クールな御曹司の契約妻になりました
「香穂ちゃん、大丈夫?」
どうにか買い物を終えて自宅に帰り着いた私が事務所のテーブルに突っ伏していると、柔らかな声が降ってくる。
成松さんの冷たくて棘のある口調とはまるで違う、暖かで優しい口調。
「奈々未さぁぁぁん!!」
成松さんに頼まれたとオフィスから書類を持ってきてくれた奈々未さんに思わず泣きついた。
「香穂ちゃん、新婚さんなのに大変そうだね」
私達は、奈々未さんが差し入れにと持ってきてくれたオフィス近くにある有名なケーキ屋のスイーツを2人で事務所で食べながら、ティータイムをしていると、奈々未さんが曖昧な表情で笑いながら私に話しかける。
千裕さんの、女性問題のこと。週刊誌の記者に私が追いかけられてしまっていること。
それから……
奈々未さんの曖昧な表情の中にたくさんの意味が含まれていることを推し量りながら私は小さく微笑む。