クールな御曹司の契約妻になりました
『私、サヤカ』

サヤカという名前を聞いて、すぐにいつも千裕さんを見守っているあの女の子だと分かった。

瞼を開けることが出来ないという状況なのに、サヤカさんがどんな女の子なのか鮮明に見える。

華奢な色白の女の子で、大きな瞳は色素が薄くて、薄い唇の口元に小さなホクロ。優しい雰囲気だけれど、真っすぐで意志の強そうな眼差しが印象的な女の子だ。


『あなた、私のことが見えてるんでしょ？』
「はい」

返事をしてみたけれど、きっと今の私は返事なんて出来ているわけがない。

『千裕はね、本当は淋しがりやなの』

『それにね、カレーライスは甘口が好きなのよ』

サヤカさんは、私に伝えたいことを一気に捲し立てる様に話し始める。


頷くことも、返事することも出来ずにいる私は、ただただそれを聞いているだけ。

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