クールな御曹司の契約妻になりました

数回の呼び出し音が鳴る。

「はい、成松です。香穂さん、どうかしましたか？」

受話器の向こうから聞こえてきたのはいつものクールな口調の成松さんだった。


千裕さんに心配かけちゃいけない。

そう思った私は、先ほどFAXの件を教えてくれた成松さんに電話をしたんだった。


成松さんには電話で全てを報告した。

差出人不明の郵便物が届いたこと。
郵便物の中身が契約結婚の契約書だったこと。


電話の向こうで、成松さんは押し黙ったまま。


「今日中にそちらに向かいます。香穂さんは家から出ないでください」　

「ハイ」

いつもよりも1オクターブほど低い、妙に落ち着きを払った威厳のある声で成松さんは私にそう伝えた。