クールな御曹司の契約妻になりました
◇◇◇
ガチャリ。
成松さんにSOSの電話をかけてから30分程経った頃、玄関の鍵が開く音が聞こえてくる。
あっ、成松さん?!
と思ったのはほんの一瞬だった。
勢いよく扉を開け放つ音があまりにも大きくて驚くと、リビングに続く階段を駆け上がる足音が聞こえてくる。
「えっ?!千裕さっ……」
私は驚きのあまりに言葉を失った。
リビングに飛び込んできたのは、電話をかけた成松さん。
ではなく、千裕さんだったから。
だけど、それより驚いたのはリビングに飛び込んできた千裕さんが私を思い切り抱きしめたから。
慌てて帰ってきたに違いない。
千裕さんは私を抱きしめながら肩で息をしている。
私を抱き寄せた腕は汗で湿り気を帯びている。