クールな御曹司の契約妻になりました
「千裕は、サヤカのこと忘れられないの?」
私の口をついて出た言葉に千裕さんの髪を撫でる手が止まる。
雷が落ちたかのような衝撃を受けたような驚きの表情を浮かべた千裕さんに私は言葉を続ける。
「もう私のことは忘れて。もう私も大丈夫。それから千裕だって大丈夫でしょ?香穂が隣に居るんだから。」
いつもの声より1オクターブほど低い声。
普段のイントネーションとは微妙に異なる言い回し。
自分が喋っているというのに、そこに私の意志なんてない。
誰かに身体を乗っ取られて、喋らされている。
「そんなこと私が言わなくてもとっくに千裕は気が付いているでしょ。千裕の心の中を占めているのはっ……」