クールな御曹司の契約妻になりました
「それより千裕さん。お仕事は?」
一気に早くなった胸の行動を押さえて、どうにか冷静な振りをしながら尋ねる。
「あぁ」
あぁって……。
思い出したかのように慌てる様子もない千裕さんの反応になんだか私は拍子抜けしてしまう。
「俺、重役出勤だから。大丈夫だよ、香穂が心配することじゃない。今日は元々午前中は時間が空いてたんだ」
私の考えていることが伝わったのか、千裕さんはいたずらな少年のような笑顔を浮かべて小さく肩を竦める。
社長が重役出勤なんて、本当に大丈夫なのだろうか。
成松さんの静かに怒る顔を想像しながら若干の不安を覚える。