クールな御曹司の契約妻になりました
「……後悔は、してないか?」

声のトーンが急に低くなった千裕さんが、表情を一気に曇らせながら真剣な眼差しを向ける。

『後悔』

千裕さんの口をついて出てきた2文字の言葉が胸の奥に抉るような痛みを与える。


千裕さんは、後悔しているんですか?


反応に困ったわけじゃない。

ふと頭に浮かんできた言葉に自分自身が傷ついて、それでいて千裕さんの答えを聞くことが怖くてその言葉が出てこなかった。


だけど、きっと千裕さんは私が返事に困ったとでも思ったのだろう。

曖昧な笑みを浮かべると、近くに置いていたジャケットを羽織り、簡単に身支度を整えるとドアを開けた。


「香穂、今夜帰ったら大事な話がある。香穂は晩御飯作って待っておいてくれないか?」

ドアを出ていく千裕さんがやけに真面目な顔してそう言ったから、私ゆっくりと頷くことしか出来なかった。

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