クールな御曹司の契約妻になりました
「今なら契約破棄してもらっても構わない。必要であれば、こちらからご両親にも婚約解消の話をすることだって出来る」
成松さんの一言で、今度は両親の悲しい顔が頭の中に浮かぶ。
結婚の話をした直後に、婚約破棄される話なんていくら楽天的な両親だって心配するに決まっている。
「橘さん、君は就職先だって決まっていないんだろ?」
そうだ、両親には婚約破棄の話に加えて就職だって決まっていないことまで伝わってしまうんだ。
重たい溜息を1つ大きく吐き出す。
目の前のテーブルには、私の名前の欄だけ空いている婚姻届。
もう後戻りなんて出来ないみたいだ。