クールな御曹司の契約妻になりました
「さて、どうする?」

「やります」

私は生唾をごくりと飲み込み、真っすぐに成松さんを見つめて伝えた声はかすかに上擦ってしまう。


自分を落ち着けようと、喉に流したコーヒーはさっきよりもやけにほろ苦く感じてしまう。

私は震える手を押さえながら、最後の書類――婚姻届けにサインをした。



「では、4月1日に入社式を行います。日時や詳細は追って報告します。では、よろしくお願いします」


私の書いた書類と婚姻届けをきれいに並べて、鞄にしまい込んだ成松さんは表情一つ変えずにそれだけを伝えるとスマートに会計を済ませてファミレスを後にした。


一人残された私は、しばらく何も手を付けることが出来ずにぼんやりとそこに佇むことしか出来ないでいた。


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