クールな御曹司の契約妻になりました
「フフフっ、驚いたでしょ?」

気味が悪い程の笑みを浮かべる奈々未さんが一瞬、手にしていたナイフをグッと力を込めて握りしめたのが分かった。

私の愕然とした反応を、可笑しそうに眺めながら奈々未さんは声をたてて笑っている。


「あんたなんか、この世界いなくなればいいのに。あんたなんか社長の前から消えてしまえばいい。あんたなんかっ……!!!」

奈々未さんは握りしめていたナイフを大きく振りかざす。

きっと一瞬のことなのに、全てがスローモーションのように感じる。

あぁ、どうしてだろう。
こんな時に思い浮かんできたのは、いつもの余裕たっぷりの千裕さんの笑顔。

もう一度、会いたかったな。


これが走馬灯っていうのかもしれない。

ふとそんな余計なことが、頭を掠めた。

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