クールな御曹司の契約妻になりました
「やはり、君だったか……」

千裕さんのため息は重たくて、悲しみが混じっていた。

「成松が秘書室にカメラを仕掛けていたんだ。そこに誰もいない秘書室で成松のデスクを調べる君が映っていた」


「社長が悪いんです!!こんな女に騙されるから……」

奈々未さんはきっと千裕さんの話すら耳に入ってなんかいない。

「香穂のことを、悪く言うのは俺が許さない」

私を庇うようにして佇む千裕さんの背中はやけに広く見えて、それでいて頼もしい。


「私より、その女が良いんですね?」

「あぁ、もちろん。香穂以上の女はいない」

多分、千裕さんの言葉が奈々未さんをさらに逆上させた。

一瞬、ほんの一瞬だけ鋭く睨みつけた奈々未さんと視線がかち合った。


その瞬間、奈々未さんは大きくナイフを振りかざし、私とそれから千裕さんに向かって突進するように襲い掛かった。


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