クールな御曹司の契約妻になりました
千裕さんは、無事なの?

ようやく意識がはっきりした私の頭に真っ先に浮かんできたのは、千裕さんのこと。

「いっ、いったぁい」

飛び起きようとしたら、あまりの痛さでうめき声にも似た声が出た。

「ちょっと、動かないでください。香穂さん、あなた階段から落ちたせいで全身打撲です。骨折がなかっただけ奇跡だとさっき先生が話されていました。今夜はここで過ごして、2、3日中には家に帰れる
ようです」

「成松さん。千裕さんは?千裕さんは無事ですか?」


私の状況を、この全身の痛みの原因をやけに丁寧に説明してくれる成松さんを制するようにして私は口を挟むと、成松さんは疲れ果てた表情を一瞬打ち消して、呆れたように微笑んだ。

「まったく。あなたもですか……」

「えっ?」

「いえ、こちらのことです」
一瞬何のことだか分からなくって、きょとんとした私に成松さんはそう言ってもう一度息を漏らすように小さく笑う。

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