クールな御曹司の契約妻になりました

成松さんはゆっくりと私に振り返って向き合うと、深々と頭を下げた。


「椎原が思い詰めて社長や香穂さんを傷つけました。これは社長の秘書としても、秘書室室長としても私にも責任があります。この度は大変申し訳ございません」

「成松さん、頭下げないでください……」


「成松さんが悪いわけじゃありません。私は別として、奈々未さんが千裕さんを傷つけたことは許せません。だけど……」


答えに詰まった。
元カレのユウタさんのことも、千裕さんのことも、奈々未さんが想いを寄せていることに全く気が付かなかったのだ。

「本気で想いを寄せている人がいることだって頭では分かっていたのに、自分のことばかり考えて契約結婚なんてしてしまった。奈々未さんを結果的に追い詰めたのは私だったんです」


思わず下唇を噛んだ。痛みを感じるのに、胸の痛みに比べたらそんな痛みはたいしたものじゃない気がした。
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