クールな御曹司の契約妻になりました
成松さんが痛みのせいでうまく身体を動かすことの出来ない私を車いすに乗せて押してくれて、千裕さんの病室の前で止まる。

なんだかやけに緊張する。

「香穂さん、顔引き攣ってますよ。どうしたんですか?」
「久しぶりに会うので、緊張して……」

つい口ごもった私に成松さんが小さく笑った。

「そういう所を、社長が堪らないと思うのでしょうね」

きっと今聞き捨てならないことを成松さんが言った気がしたけれど、胸がドキドキとうるさくて成松さんの言葉なんか耳に入ってはこなかった。

「さぁ、開けますよ」

成松さんはそれだけを言うと、私の返事なんか聞かずにゆっくりと千裕さんの病室のドアを開けた。
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