クールな御曹司の契約妻になりました
「どうしてこんなことになったのに、平気な顔できるんですか?」
千裕さんの胸に押し当てられたままだった顔を引き剥がすように離れながら尋ねる。
いつもと変わらない千裕さんの香りなのに、やけに胸が高鳴ってしまうのは抱きしめられたせいだ。
普段と変わらない優しい笑顔にキュンと胸が締め付けられる。
あぁ、なんて何か思いついたように私の質問に口を開く。
「香穂が無事なら、他のことなんてどうでもいいんだ」
千裕さんの言葉が私の心を震わせる。
「生きていてくれて、ありがとう」
優しい眼差しで見つめる千裕さんが、私の瞳を捕らえて離さない。
胸の奥が熱くなって、目頭まで熱を感じる。