クールな御曹司の契約妻になりました

「搭乗予定の便を一便早めたんだ。成松はすぐに会社に、俺は念のため家で香穂の様子を見てから会社へ行こうと思ってたんだ。ちょうどタクシーを降りたところで二人の、というか椎原さんの金切り声が聞こえてきた、というわけだ」



「ナイスタイミングだっただろう？香穂にとって正義のヒーロー登場みたいな？」

言葉を失った私に、冗談めかしたいたずらな笑顔を向ける。


「でも、千裕さんが私を助けたばっかりに……」

インパクトの強すぎる見出しばかりが並んだ朝刊に目を遣る。

きっと私だけが傷ついていたのならこんなに大きな騒動にはならなかったに決まってる。

千裕さんは怪我をすることもなくて、きっと会社の株価だとか経営だとか私の知らない難しいことへの影響はそこまで大きくなかったんだろう。