クールな御曹司の契約妻になりました
「抜糸、痛かったですか?」
「あぁ、地味に痛いんだな」
スーツから部屋着のTシャツに着替えた千裕さんの腕に、まだ痛々しさの残る傷跡が見えた。
千裕さんは抜糸したばかりのその傷を見て、苦笑いしながら答えてくれた。
入院中はずっと包帯で巻かれていたから気が付かなかったけれど、その傷は私の想像を超すほどに大きな傷だった。
きっと千裕さんの右腕の傷はずっと残るんだろうな。
千裕さんに刻まれてしまった傷に、『後悔』という二文字が並んで心がシクシクと痛みを覚える。
千裕さんにこんな大きな傷をつけてしまったんだ。
責任を取って契約結婚はもう辞めたほうがいいのかもしれない。
頭の中ではそう思うのに、『辞めたくない』って心がそう叫んでいる。