クールな御曹司の契約妻になりました
そっかぁ。
千裕さん、やっぱりサヤカさんのことが忘れられないんだ……。
もう二人の間に流れる重苦しい空気にも、これから宣告されるであろう悲しい言葉にも耐えることが出来そうになかった。
「わっ、私はっ!!千裕さんが例えサヤカさんを忘れられないって言ったって、契約結婚でも何でもいいから、ただ千裕さんと一緒に居たいんです。千裕さんの隣で笑っていたい」
握りしめていた拳に頬を伝っていた涙が一粒零れ落ちた。
「だって、私は千裕さんが好きだからっ!!」
言ってしまった……。
言葉にしてしまった後に、激しい後悔が押し寄せる。
終わった。
『5年間の恋愛禁止』
契約結婚を辞めたくないって抵抗している私が、自分自身の手で契約違反してしまった。
オウンゴールだ。
その場にいることすら耐えられなくなった私は思わず駆け出していた。