クールな御曹司の契約妻になりました
記事を読み終えると、事務所の椅子に足を組んで疲れた表情をしている成松さんに視線を移す。


「これまでの社長の熱愛スクープには会長も『若気の至りだ』と見て見ぬふりをされてこられた。」

会長って、千裕さんのお父様のことだ。

私に面と向かって話しかけるでもなく、ひとり言のように話し始めた成松さんの言葉に耳を傾ける。


「だけど、今回はわけが違う。社長が形式上の結婚だといってもこの記事は完全なる不倫スクープだ。二階堂グループの株価も暴落間違いなし。会長も今回ばかりは黙ってはいないだろう。」


話し終えた成松さんの大きな溜息だけが事務所に響いて、事の大きさを私に教えてくれているような気がする。


「香穂さん、これは僕からのお願いです。会長からの社長に対する処分がどのようなものになったとしても決して動揺しないでください。何かあったらいつでも相談してください。」


「もちろんです」

私に向かって頭を下げた成松さんがやけに小さく見えて、私は両手で拳を強く握りしめながら大きく頷いた。
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