クールな御曹司の契約妻になりました
「玄関前、まだカメラマンがいましたか?」


胸のざわつきを押さえる様に私は話題を切り替える。


「あぁ、こっちにも来ているとは驚いた。仕事先にも張り付いていて困る。」


千裕さんが弱々しい苦笑いを浮かべる。

「発売される前日からですよ。この数日は、買い物はもっぱらネットばかりです」

わざとらしく肩を竦めてみせると、千裕さんは小さなため息を付きながら心配そうな表情で私を見つめる。


「香穂、迷惑かけてすまない。テレビでも連日同じ話題ばかりで香穂だって傷ついただろう?」


千裕さんの声があまりにも優しかったから、私は喉の奥から熱いものがこみ上げてきそうになるのをグッと堪える。

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