闇を抱える蝶と光輝く龍
紗「結衣ちゃん、好きな人いるでしょ?」


空き教室に入ると紗奈は私に問いかけた


「…やっぱり気づいた?」


紗「それは気づくよ。私は伊達に結衣ちゃんの親友やってるわけじゃないし、それに結衣ちゃん今恋してる顔してるから」


恋してる顔かどうかはよく分からないけど、紗奈には気づかれると思ってた


だって紗奈は周りの変化には人一倍敏感だから


紗「それで、誰が好きなの?洸龍の誰かだとは思うけど」


「…桐人…が好きなのかも」


私も最近気づいた


桐人の事でモヤモヤするのも


しほって子の事ばかり気にしてしまうのも


桐人のことが好きだからなのかもって


紗「そっか。じゃあ、なんで伝えないの?一ノ瀬くん学校でも人気だし、族の世界でも人気だって舜くんが言ってたからぼやぼやしてたら他の人に取られちゃうよ」


「…もう、手遅れなの」


桐人にはもう、大切な人がいる


紗「え?手遅れ?なんで?」


「…桐人には彼女がいるの。多分、私と会う前から。だから最初から叶わない恋だったの」


紗「でも、姫はいなかったって」


「桐人にとってその子はとても大切だから族の喧嘩に巻き込まれないように離れてるみたい」


紗「そう、なんだ」


すると紗奈は私を優しく抱きしめた


紗「結衣ちゃん頑張ったね。偉いよ。叶わないって思ってもみんなの前では泣かないでいつも通りでいようとしたんだよね。偉い偉い」


紗奈は優しい声でそう言いながら子どもをあやすように背中をポンポンと叩いてくれた


私はその優しさに負けて声を殺しながら泣いていた
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