絶望するにはまだ早い!!





「あー、ごめんごめん。気が付かなかったわ」


大きな声でそう言って、自らの前にあるメニューを取ってくれた隣席の女性。


「あっ、ありがとうございます」


そう言って初めてまともに顔を見てみれば、全く化粧っ気のない、けれど造作の大きな派手めで綺麗な女性の横顔。


彼女はいいのいいのとでも言うように顔の横で手をひらひらと振り、興味なさそうに大ジョッキを口元へ運んだ。


ぐびぐびと音が聞こえてきそうなほどの気持ち良い飲みっぷりに、思わず見惚れる。


けれどあんまり見るのもなんだから、視線をメニューに落とす。


ドイツバルだし、ビールなら黒かな。


そんなことを考えながらメニューを見ていると、横から指が伸びてきた。


「悩んでるんならコレ、オススメだけど」


相変わらず興味はなさそうなのに、メニューを指し示すシュッと伸びた指先の主張は激しい。


「えっ、ケスト、リッツァーですか?」


「そう、ケストリッツァー。コレそうだよ」


そう言って自らのジョッキを私の前へ置いてくれるが、ほとんど残っていなくてよくわからない。




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