甘い脅迫生活





「だってぇ、やっぱり社長といえば山田さんじゃないですかぁ?」

「はぁ。」


まぁ確かに、山田さんは常に隣にいるけど。ちなみに家も隣だけど。いつでも駆け付けられるようにらしい。プライベートでも炊事洗濯、少女漫画の用意まで山田さんがしてたみたいだし。


「あの2人、仲が良すぎません?一部の女子社員からは怪しいって言われてたんですよ!」

「……。」


想像してみれば、よほど隣に私がいるよりもしっくりきて悲しくなった。


それは私が社長になんらかの感情があるからとかじゃなくて、女としてでも山田さんに色々負けている気がしてならないからだ。

それにしてもあの2人にそんな噂が。確かに、言われてみれば仲が良すぎるような気がする。


ボーッと考える私を他所に、クッキーをありえない速度で食べ続けるさえちゃんは楽しそうに話している。



……この間、合コンあるからダイエットしてるって言ってた気がするんだけど。とりあえずもう怒ってないみたいだからまぁいいか。



「無表情の山田さんが、あまりにも周りに愛嬌を振りまく社長に嫉妬しちゃって、壁ドンで詰め寄るんです!『お前、少し痛い方が好きだよな。』とかってあの無表情が口角を上げるんです!ふあっ、やべー!」

「さえちゃん!妄想の世界から帰ってきて!」



拳を握って足をじたばたするさえちゃんが現実に戻ってきた頃には、さえちゃんの息は上がっていた。意外とクッキー分のカロリーは消費したかもしれない。




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