甘い脅迫生活




「合コン仲間に秘書課の子がいるんですよね。でも社長って女の噂、ほとんどないから。」

「へー。」


私はその”ほとんど”が気になりましたけどね?いや別にこれはゴシップに興味がある程度で私の感情は関係ないわけだけど。


「あ、気になります?社長の浮名。」

「別に?山田さんのだけで十分面白いし。」


なるべく冷静にと努めて言ったのに、さえちゃんのニヤニヤが止まらない。

「なによ。」

「うふふっ、やっぱり旦那さんの話は気になるんですね?知らないフリしてたくせに。」

「すみませんでした。」


ちょくちょく棘を仕込んでくるさえちゃんに素直に頭を下げた。でもこれだけは分かってほしい。


「私も、ゆ、社長のことを知ったのは最近、だし。」

「へー、スピード婚!」

「まぁ、それ。」


出逢って2日目で入籍済ませた超スピード婚ですけどね?だからこそ知らないことの方が多い。


「でもこれ、聞いて楽しいものじゃないと思うんです。それでも聞きます?」

「っっ、まぁ、気になる、し。」


確かに。社長の女性遍歴なんて聞いてもいい気分はしないかもしれない。


だけど脅迫結婚とはいえ、私は今一応、あの人の奥さん、なんだし。



「私、社長のことなにも知らないから、ね。」


優雨のことを知っているのは、あくまで家での西園寺優雨。社長としての彼は皆無と言っていいほど知らない。




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