甘い脅迫生活
すぐに部屋のドアが開いて、料理長自らが給仕をしてくれた豪華な料理の数々。前菜からメイン、ワインまで、とても美味しかった。
量もちょうどよくてまだデザートを食べる余力があるくらい。
優雨ってばいつもこんなの食べてるのかな?うわ。今まで手抜き料理出してた私、最悪。めちゃくちゃ恥ずかしい。
料理教室にでも通おうか。いや、でも、お金ないし。
いっそ山田さんに習おうか。いや、それはお金を払うより遠慮したいことだ。
「うちの娘、きちんとお世話できています?」
「ブッ、」
デザートを待つ間、残りのワインをちびちび飲みながら考え事をしていた私の目を、お母さんの一言が一気に冷ましてくれたらしい。
「ちょ、おか、ゴホッ、」
「あら。気になるじゃない?貴女ももう24だし。自炊くらい。ねぇ?」
意地悪そうに笑うお母さんを睨んだ。自分はできないくせしてそんなこと言う?普通。
「美玖さんは料理ができないからねぇ。娘のことが心配なんだね」
「ふふ。私は貴方ができるからいいの。」
出た。ただ話しているだけだけど、どう考えてもいちゃついているようにしか見えないうちの両親。今でもめちゃくちゃ仲が良くてそれはもう、見ていられないほど。
いいことなんだろうけど。ここではやめてほしい。
「料理ができない美玖さん、可愛いからいいんだ。」
「私も貴方のお料理、大好きよ。」
「はぁ。」
呆れる私と茫然としている優雨を前に、両親は完全2人の世界。優雨のおじさんたちに至ってはブスッとして座っているだけ。誰も突っ込まないけど、お料理も、前菜から一口も食べていない。